今秋から本格提供されるeve autonomy、 試験導入では自動運転EVによる搬送で年間1,800時間の労力を低減

▲検査用サンプルを載せて事業所内を自動走行する「eve auto」

アジャイル思考で「まずやってみる」

工場の敷地内をゆっくりと走る小柄なEV。しかし、運転席には人の姿が見えません。「eve auto(イヴオート)」は、EVによって生産現場の搬送工程を自動化する新しいソリューションサービス。ヤマハ発動機のグループ会社、eve autonomyが今秋から本格的な提供を計画しています。

写真は、プライムポリマー※姉崎工場(千葉県)の事業所内。同社ではこの春から全国に先駆けて「eve auto」を試験導入し、すでに一部搬送工程の自動化を実現しています。

「幸いなことに、当社にはアジャイル思考を奨励するような空気感があります」。そう話すのは、同社で導入を牽引した外崎勇太朗氏(生産・技術部)。「まずやってみて、細かく確認しながら、浮かび上がった課題を一つずつ潰していこうという思考です。この考え方が、搬送の自動化にいち早くチャレンジできた背景の一つとなりました」と振り返ります。

同社で「eve auto」が担っているのは、ポリプロピレン樹脂の搬送です。生産された樹脂の一部をサンプルとして検査するために、現場から約1キロ離れた施設まで、昼夜問わず、毎日30回ほど運んでいます。「eve auto」の導入以前、この作業は自転車などを使って人が行っていました。1回あたり約10分、1日で約5時間、1年間でじつに1,800時間前後の労力がこの搬送作業に費やされていました。

▲「導入しやすいサブスク方式のサービスが、アジャイル思考にマッチして早期導入につながった」と話すプライムポリマー 生産・技術部 外崎氏

実績と知見を積み上げて領域拡大を

その一方で、導入前には少なからず不安も抱えていたそうです。

「大きなところでは二つありました。まず、安全性です。姉崎工場は危険物も取り扱っておりますので、事業所内の混合交通の中で、果たして安全な運行が確保できるか? といったところ。もう一つは、自動化ツールとしてのEVを十分に使いこなして、きちんと価値を生み出せるか? というものでした」(外崎氏)

実際にテストランが始まると、確かに小さな課題がいくつか浮上しました。走行ルート上で行われる各種工事や路上駐車、また通行路まで伸びてくる雑草など、走らせて初めてわかった課題もありました。一方で懸念していた安全性については、「逆に夜勤中の明け方によく発生した自転車の転倒リスクなどが軽減し、手ごたえを感じ始めている」そうです。

「思い描いていた姿を100とすると、現在はまだ70くらいの段階です。走行に関する種々の課題はほぼ解消されていますが、慣れ親しんだ自転車から自動化への転換に、人の方がやや追いついていない部分も見受けられます」と、外崎氏。とは言え、動き出した搬送の自動化に「ゆくゆくは、ガスのサンプルなど、危険物の搬送も自動化できるように実績と知見を積み上げていきたい」と話していました。

※(株)プライムポリマー 三井化学(株)と出光興産(株)の出資によるポリプロピレンとポリエチレンの製造・販売会社

▲工場建屋内も走れるコンパクトな設計ながら、1,500kgまでの牽引と300kgまでの積載が可能

eve autonomy 自動運転の可能性をすべての工場へ

慢性的な人手不足に悩む生産現場で、自動化は大きな課題です。しかし「つくる」という工程に較べて「運ぶ」の自動化は進んでいないと言われています。運用が始まり、その姿を見守る外崎氏は、「2030年頃には事業所内のあらゆる搬送作業が自動化できるのでなはいか」という実感を持っているとのころ。これからの数年間が「搬送の自動化」の成長期となるかもしれません。 

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MobiliTech編集部

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