自動車の技術を写真と図解で詳解する『モーターファン・イラストレーテッド』(刊行:株式会社三栄)の188号(5月13日発売)の特集「充放電」です。電気自動車の生命線・バッテリーは放電時、充電時、どのような振る舞いをしているのでしょうか。
モーターファン・イラストレーテッド Vol.188
2022年05月13日発売
定価1760円(本体価格1600円)
ISBN:9784779641669
https://www.sun-a.com/magazine/detail.php?pid=12345(三栄公式ウェブ)
Amazon:Kindle版、ムック本
お使いのiPhone、電池大丈夫ですか。「一日もたないんだよね」とか「さっき76%だったのにいきなり落ちた」とか「『サービス』って出てる」とか。ご存じ、リチウムイオンバッテリーは使用に伴って劣化が進むことは不可避で、これは電気自動車にとっても(ここまで極端ではないにせよ)同様の症状が起こる可能性があるということです。
特集コンテンツ一覧
- Introduction 充電・放電は電池を確実に殺す。だから「延命」と「救済」は必須
- 復習:電気自動車の充放電、その仕組み
- 電池:電池の中で何が起きているか[評価試験・日本カーリット]
- 電池:性能とコスト、量産性のバランスポイント[日産・リーフ]
- 電池:耐久レースにおけるe:HEVのヒートマネジメント[ホンダ・フィット]
- 電池:中古BEV大量流通時代への準備と診断技術[ファブリカコミュニケーションズ/丸紅プラックス/東芝]
- 電池:全固体電池の可能性と課題[日産]
- インバーター:SiCのインパクト[ローム]
- コンバーター:高電圧を12Vに下げて使う[豊田自動織機]
- 充電器:電気自動車を便利にする急速充電器の技術[新電元工業]
- 充電器:スケールメリットでCO2削減を図る[ボルグワーナー]
- Epilogue:充電よりも「上流」にある問題と電池をいじめる急速充電
「リチウムイオン電池は劣化する」と言われますが、ではどのような理由で劣化していくのか。それを示したのがIntroduction「充電・放電は電池を確実に殺す。だから『延命』と『救済』は必須」です。充放電の仕組みは各所で解説されているとおりですが、ではそれがなぜうまくいかなくなってしまうのか。うまくいかなくなる原因はどのようなものなのか。乱暴に一言で表すなら「イオンの移動と収容がうまく働かなくなるから」です。
電池を大事に使いたい。長くもたせたい。そのために自動車技術は英知を集めて劣化を最小限にとどめています。充電するときの制御、放電するときの制御、温度の管理、壊れにくい物質の選択――さまざまな方策について解説しています。
日本カーリットには、充放電時に電池には何が起きているのかをお聞きしました。「リチウムイオンバッテリー」とはいってもさまざまな種類があり、自動車用に適する構造にはどのようなものがあるのか。その「構造」から出入りするリチウムイオンの充放電時の振る舞い、劣化はなぜ進むのかなどを解説しています。同社ではバッテリーセル/モジュールの性能評価のために、過剰充放電、圧壊、燃焼耐火試験など、さまざまを実施しているとのこと。その知見を詳細に伺いました。
では、製品としてのバッテリーセル/モジュール/パックはどのように扱われているのか。電気自動車の雄・日産リーフをテーマに取材しました。現在のe+グレードでは192セルを用いるパックにおいて、高ストレス時の熱マネジメントは空冷としている同車、水冷式も見受けられる昨今、どのようにしてこれを実現しているのか。また、直列で高電圧とする際の「間の不具合セル」が引き起こす性能低下を防ぐ/最小限に抑えるためにはどのような手段を講じているのか。「世界で一番売れている電気自動車」のキーデバイスについて、日産のエンジニアに伺いました。
各所から熱い期待を集める全固体電池。先日、日産が現在の取り組みと将来展望、研究開発の現場を報道陣に公開しました。全固体電池とはどのような仕組みなのか、液体電解質式と比べてどのような得失差があるのか。自動車に適用した際にはどのようなメリットが見込まれるのか。「熱い期待」は実際に可能なのか。詳細にレポートします。
電気自動車を上手に運用するために不可欠な充電器という存在。ただし、急速充電はセルを傷める可能性が高く、しかしユーザーは時短したい。その絶妙なバランスをとる最新の急速充電器技術について、新電元工業にお話を伺いました。どれだけの電圧/電流をクルマに送るのか、次々と充電待ちが押し寄せる状況ではどのように折り合いをつけるのか、高出力化要求に対する現在の回答とは――などを紹介しています。
このほかにも、モーターとバッテリーの超有能なコーディネーターともいえるパワーエレクトロニクス、レースシーンにおけるバッテリーのマネジメント技術、将来的に急増する中古BEVに対する評価技術の確立と評価基準の検討など、「充放電」にまつわるさまざまなコンテンツで特集を構成しています。