トヨタ、新型RAV4で「Arene」初採用 SDV量産化へ前進

ウーブン・バイ・トヨタ(Woven by Toyota、以下WbyT)は21日、トヨタ自動車が2025年度内に発売を予定している新型「RAV4」において、同社開発のソフトウェア開発基盤「Arene(アリーン)」が初めて採用されたと発表した。トヨタの量産車でAreneが採用されるのはこれが初めてで、ソフトウェア定義車両(SDV)の量産に向けた重要な一歩と位置づけられる。

Areneは、安全性と品質を確保しながらソフトウェア開発の効率化と再利用性を高めることを目的としたプラットフォーム。WbyTでは「人・クルマ・社会をつなぐ」中核基盤と位置づけ、交通事故ゼロ社会の実現に向けた技術革新を支えるとする。

Areneは3つの主な要素で構成されている。

1つ目の「Arene SDK(ソフトウェア開発キット)」は、車載ソフトウェアをモジュール化して構築・評価・展開を容易にする基盤で、従来は車種ごとに異なる設計が求められていた機能を、複数車種へ展開可能にする。新型RAV4ではこのSDKを用い、音声対話によるマルチメディア操作機能やセンターディスプレイ、予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense(TSS)」の開発が行われた。

2つ目の「Arene Tools」は、仮想環境上でソフトウェアの検証や評価を行うツール群で、実車での検証回数を減らすことが可能。新型RAV4では、シミュレーションを用いて様々な走行シーンにおけるTSSの機能評価が進められた。

3つ目の「Arene Data」は、ソフトウェア機能の継続的な改善に向けたデータ収集基盤である。ユーザーの同意のもとで収集される走行データを分析し、自動運転やADAS(先進運転支援システム)の高度化、OTA(無線アップデート)による機能拡張、さらには車内アプリのパーソナライズに活用される。今回の新型RAV4でも、TSS関連のデータ取得に同機能が用いられている。

WbyTでは、Areneを通じた開発の中で、TSSに組み込まれるAIモデルの構築、周辺認識技術、ドライバーの異常検知、ユーザーインターフェースの改良などを担ったという。

Areneの導入により、今後は開発期間の短縮やグローバル展開の加速が期待される。また、車両販売後もArene Dataを通じて機能改善を続け、ユーザー一人ひとりに最適化された運転体験の提供を目指す。

トヨタが「世界で最も多くの顧客に愛されるSUV」と位置づけるRAV4におけるAreneの採用は、同社のSDV戦略の起点とされる。WbyTでは今後、地域の多様なニーズを反映した「町いちばん」のクルマづくりを進めるとともに、Woven Cityでの実証実験や自動運転技術との連携も視野に入れ、クルマと都市の新たな関係性を模索していくとしている。

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石川 温/Tsutsumu ISHIKAWA

月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜午後8時20分からの番組「スマホNo.1メディア」に出演(radiko、ポッドキャストでも配信)。NHKのEテレで「趣味どきっ! はじめてのスマホ バッチリ使いこなそう」に講師として出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(エムディエヌコーポレーション)がある。ニコニコチャンネルにてメルマガ(https://ch.nicovideo.jp/226)も配信。

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