
東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社は4月22日、去る4月6日に発生した広域的なETCシステム障害に関する原因の究明結果と、当面の対策を取りまとめ発表しました。この障害により、NEXCO中日本管内を中心とした一部料金所で課金処理ができず、ETCレーンが通行不能となり、最大で1都7県の17路線106箇所で2km以上の渋滞が発生するなど、交通に大きな影響が出ました。応急復旧までには発生から約38時間を要しました。
原因究明の結果、障害は深夜料金割引の見直しに向け構築中のシステムにおいて発生したことが判明しました。具体的には、ETCカードが使用可能か否かを判定するためのデータを、広域管理システムから地域管理システムへ配信する際に、データが破損したことが直接の原因です。このデータ破損は、送信ごとに生成される「宛先データ」を消去する機能が広域管理システムに備わっていなかったため、前回の宛先データが消去されずに蓄積し、本来の「ETCカードの判定データ」の領域を侵食したことで引き起こされました。その結果、破損した判定データが料金所サーバに送信され、一部の正常なETCカードが通行不可と誤って判定されてしまったものです。このメカニズムは工場での再現試験でも確認されています。応急復旧として、現在は手動でメモリを消去しながらデータ配信を行っています。

この事態を受け、各社は今後、お客さまへの影響を最小限に留めるための「当面の対策」として、以下の5つの項目を講じると発表しました。
- 料金所におけるETCレーンの運用見直し:広域的な障害発生時は、渋滞を避けるため、出口料金所の発進制御バーを速やかに開放する対応を定めます。その際、料金表示器はカバーで隠し、ETC通信は継続して通常時と同様に料金徴収を行う方式に変更します。これにより、後日精算に伴う事務処理の増加や、お客さまへの連絡の手間を削減します。
- お客さまへの情報提供強化:本社本部に情報収集・提供の担当者を置き、支社本部等への指示により、あらゆる情報媒体(道路情報板、ハイウェイラジオ、HP、SNS、ETC2.0等)を有効活用し、一貫性のあるきめ細やかな情報発信を行います。国等の道路管理者とも連携し、高速道路だけでなく一般道側での情報提供も調整します。
- ETCシステム障害からの早期復旧体制構築:グループ会社に加えベンダーとの間でも24時間連絡体制を確立し、システム障害の発生時、迅速な原因究明と応急復旧を図ります。特にシステム改修時には、関係者間で日程や内容を共有し、速やかな復旧体制を確保します。原因となったプログラムは速やかに改修し、再発防止のため、前回の宛先データを通信終了後に都度クリアするプログラムを適用します。安全対策として、宛先データ状態を監視し、設定値を超えた場合にアラートを発報したり、データの自動配信を停止したりする機能の追加も検討します。
- 本部体制の構築:ETCシステム障害を対象とした危機管理体制の発令基準を定めます。広域的な障害を疑う目安(同一支社管内の複数料金所(2箇所以上)で、1箇所当たり30分間に10台以上の異常停止車両発生)を設定し、この目安を超過した場合には情報収集を開始し、障害状況に応じて体制を強化します。
- 連絡体制の構築:広域的なETCシステム障害を重大な事象と位置づけ、事務所・支社・本社、国や関係道路管理者、高速道路会社(隣接事務所・支社・本社)を含む連絡系統を見直し、連携を強化します。広域的なETCシステム障害の定義(複数の料金所でETCレーンに障害が発生している状態)も明確化しました。

なお、障害発生時に料金所で発進制御バーを開放し通過したケースは、会社の措置によるものであり、不正通行にはあたらないとしています。また、深夜割引見直しの運用開始時期については令和7年7月頃を予定していますが、今回の再発防止に向けた作業も踏まえ、改めて工程を精査するとしています。
今回の事象における利用者の通行料金の支払い義務や、渋滞による遅延に関する損失補償等については、道路整備特別措置法および供用約款に基づき、通行料金の支払い義務は生じる一方、遅延による損失補償は行わない考えが示されています。