
全日本空輸株式会社(以下、ANA)は、長距離国際線に就航する中型機ボーイング787-9型機に向けて、最新のビジネスクラス、プレミアムエコノミー、およびエコノミークラスの各シートを開発・採用したと発表した。2026年度以降に長距離国際線機材として順次導入が開始されるこれらの新シートは、中型機でありながら大型機と変わらぬ世界トップクラスの快適な空間を提供することを目的としており、航空業界における顧客体験の新たな基準を打ち立てるものと期待されている。ANAはこれまでも快適性・機能性の向上に努めてきたが、約10年ぶりとなる中型機のビジネスクラスシート刷新を含め、全クラスにおける大幅なアップグレードにより、お客様の体験価値向上をさらに推し進める構えだ。
ビジネスクラス「THE Room FX」:中型機に大型機並みの個室空間を
ビジネスクラスには、最新のドア付き個室型シート「THE Room FX」が導入される。このシートは、2019年に大型機ボーイング777-300ERへ導入されて高い評価を得た個室型シート「THE Room」での開発経験をベースにしている。「FX」は「Future Experience(未来の顧客体験)」を意味し、「Elevating comfort through innovation」というコンセプトのもと、構想から7年以上の歳月をかけてANAとシートメーカー、デザイン会社が考案したANAだけのオリジナル製品である。
開発には、乗員・乗客用航空機座席製造で世界有数のメーカーであり、世界中で100万席の航空機用座席の導入実績を持つフランスのSafran Seats(サフラン・シート)社と、ロンドンを拠点に約40年にわたり数々の革新的な航空機内装デザインを手掛けてきたAcumen Design Associates(アキュメン)社が協力している。サフラン社は総従業員数10万人、2024年の売上高273億ユーロを誇る国際的なハイテクグループ企業であり、アキュメン社は英国航空の「ベッド・イン・ザ・スカイ」やエティハド航空の「ザ・レジデンス」、ユナイテッド航空の「ポラリス」などを手掛け、広範な国際特許を保有するデザインコンサルティング会社である。
「THE Room FX」の最大の特徴は、中型機であるボーイング787でも大型機並みの空間体験を可能にした、世界トップクラスの居住性である。個室ドアと壁を薄型化し、背もたれに曲線ラインを採用したシートを互い違いに配置(スタッガード配列)することで、空間を再構築した。さらに、シンプルなメカニズムにより、椅子、ソファ、ベッドという3つのスタイルを自由に選択できる。横幅が一段と広くなったことでシートからソファの概念へと進化し、あらかじめ背もたれをリクライニングさせた「プリリクライニング方式」を採用したことで、リビングのソファのように自由な姿勢で過ごすことが可能である。また、レッグレストを水平にすることで、ソファから快適なベッドスペースへと変化する。
機能面も大幅に向上しており、現行のボーイング787-9長距離国際線仕様機と比較して1.4倍となる大型モニターを搭載している。さらに、十分な収納スペースに加え、USB Type-Cポート、ワイヤレス充電設備、Bluetoothオーディオ接続機能なども完備されている。環境への配慮もなされており、個室ドアや座席間のディバイダーなどの薄型化によって座席の軽量化を実現し、追加の設備がありながらも現行シートと同水準の重量に抑えられている。

プレミアムエコノミークラス:世界トップクラスのゆとり空間

プレミアムエコノミーおよびエコノミークラスには、1972年の設立以来航空業界におけるプレミアムシートのリーディングサプライヤーとして知られるドイツのRECARO Aircraft Seating(レカロ)社の最新モデルが採用された。RECARO社はドイツのシュヴェービッシュ・ハルに本社を置き、世界に2,900名以上の従業員を擁するシートのトップメーカーであり、人間工学に基づいた軽量設計と卓越した品質へのコミットメントを通じて快適性を追求している。
新しいプレミアムエコノミーシートは、最新の技術と人間工学に基づき設計されており、最高クラスの座り心地と快適性を体験できる。特筆すべきは、大幅に拡大されたそのスペースである。シートピッチ(座席間隔)は従来のシートよりも2インチ(約5cm)拡大されて40インチ(約101cm)となり、グローバルスタンダードにおいてもトップクラスのゆとりを実現した。また、長時間の飛行でも十分にくつろげるよう、リクライニング量も従来より2インチ(約5cm)拡大され、9インチ(約23cm)となった。これにより、乗客は深いリクライニングによる新たな空間で、これまで以上に快適な空の旅を楽しむことができる。
機能面においては、従来のものから大きく進化し、大型で高性能なモニターを完備している。さらに、十分な収納スペースやUSB Type-C充電設備、Bluetoothオーディオ接続機能なども備えられており、最新のデジタルトレンドに対応した充実の設備環境となっている。
エコノミークラス:人間工学に基づいた設計と大幅なリクライニング向上

エコノミークラスにおいても、RECARO社の最新技術と人間工学に基づく設計が遺憾なく発揮されており、長距離フライトでも快適な座り心地が追求されている。
シートピッチはエコノミークラスとしては最大クラスである33~34インチを維持しつつ、膝元部分の設計改良を行ったことで、従来に比べて足元のスペースを1インチ(約2.5cm)拡大することに成功した。さらに注目すべきはリクライニングの進化である。プレミアムエコノミーと同様に、従来シートから2インチ(約5cm)リクライニング量が拡大され、結果として従来の1.5倍にあたる6インチ(約15cm)のリクライニングが可能となった。エコノミークラスシートでありながら、世界トップクラスのシートピッチとリクライニング量を誇る仕様となっている。
また、エコノミークラスのエンターテインメントシステムには最新式のタッチ式モニターが採用された。これにより、これまで座席に装備されていたコントローラーを廃止することが可能となり、軽量化を実現している。もちろん、大型モニターに加えてUSB Type-C充電設備やBluetoothオーディオ接続といった充実した最新機能も搭載されている。
【総括】 ANAが2026年度から順次導入するこれらボーイング787-9長距離国際線機材向けの新シートは、ビジネスクラスにおける「THE Room FX」の革新的な個室空間から、プレミアムエコノミーおよびエコノミークラスにおけるシートピッチ・リクライニングの大幅な拡大に至るまで、すべてのクラスで妥協のない快適性が追求されている。航空機用シートのトップメーカーであるSafran社やRECARO社、そして世界的な実績を持つデザイン会社であるAcumen社との協業によって生み出されたこれらのシートは、長距離国際線を利用する乗客に、これまでにないくつろぎの空間と「未来の顧客体験」をもたらすだろう。