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昨年、自動車関連のジャーリストと話をしていると「ベブってさぁ」という言葉が出てきました。聞き慣れないなと思っていたら、2021年12月14日に開催されたトヨタ自動車の説明会でも、豊田章男社長が「ベブ」という言葉を連発していました。
ベブとはBEVのことで「バッテリーEV」の略称となります。これまで「EV」という言い方が主流でしたが、EVには他にも電気でモーターを回して走るクルマが存在します。
そこで、純粋にバッテリーだけを搭載して走るクルマをBEVというようになったようです。
バッテリーを搭載して走るものの、様々な課題が山積
まず、一般的なのがBEVです。日産「リーフ」、レクサス「UX300e」、ホンダ「Honda e」などが該当します。その昔、三菱も「i-MiEV」を出していました。
BEVの構成はぶっちゃけていえば、ラジコンに近いかも知れません。大きな電池を搭載し、電気でモーターを回して走ります。減速時はモーターを発電機としてエネルギーの回収を行い、蓄えます。
ガソリンで動くエンジンがないため、エンジンオイルも必要なく、交換するメンテナンスもありません。モーターに流れる電力をコントロールすることで速度を変えられるので、ギアも不要となります。バックするときもモーターを逆回転させるだけで済みます。
アクセルを踏めば、すぐに加速するのがBEVの特徴でもあります。
排気ガスやCO2が出ることもなく、エンジンやアイドリングの音もしません。
また、自宅の駐車スペースに200Vのコンセントを設置すれば、我が家で充電できるというメリットもあります。夜、充電ケーブルを挿しておけば、夜間電力で安価な電気料金で、朝、バッテリーが100%の状態からBEVを走らせることもできてしまいます。まるでスマートフォンのような使い勝手となっています。
BEVの弱点では言わずもがなバッテリーです。現状、バッテリーは高価であり、その結果、車両価格も高めとなっています。
ガソリン車であれば、ガソリンがなくなっても、ガソリンスタンドに行けば数分で満タンにすることができます。しかし、BEVの場合、高速道路のSA・PAや街中にあるディーラー、郊外であればコンビニの駐車場などに充電スポットが点在しています。そういった場所で充電できるのですが、1回あたり30分までの急速充電では100%の状態まで充電することは難しいです。
各自動車メーカーはBEVにおいて航続距離の長さを競っていますが、まだまだガソリン車に比べて物足りないというのが正直なところです。
また、ノートパソコンやスマートフォンと同様に、バッテリーは劣化していくという弱点もあります。ここ最近のBEVは劣化しにくいような仕組みも導入していますが、「なんとなく劣化が不安」というユーザーの声が多いのも事実です。
バッテリーの劣化が起きれば、それだけクルマの価値も下がってしまいます。「下取りに出すときに、思った以上に買いたたかれる」なんてことも起きるかも知れません。
トヨタ自動車「bz4X」はサブスクリプションサービスである「KINTO」でしか入手できないようになっています。これも、数年後に価値が下がってしまいかねないというユーザーの心理的な負担に配慮して、あえてサブスクだけとして、数年後に返却できるような仕組みしているという話があります。
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。 ここ最近、SDGsの風潮が強く、地球のことを考えば、BEVを普及させるべきという声があります。しかし、電気を作るには、火力発電などであればCO2を排出します。太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーだけで電力をまかなえるのが理想ですが、それは不可能に近いです。
関東では、2022年3月、電力が逼迫して、大規模停電の一歩手前のところまで来ました。
2011年3月の東日本大震災により、福島原発が津波で被災し、操業停止を余儀なくされました。これにより、日本の原子力発電への見直し機運が高まりました。全国各地の電子力発電所が再稼働できない状態となっています。
BEVを普及させるには、今後、日本のエネルギー構成をどのようにしていくのかという議論が不可欠といえるでしょう。