ソウルで自動運転バスが運行開始、その様子を視察

韓国・ソウルの繁華街で2022年11月25日から自動運転EVバスが運行を開始しました。ソウル市中心部の清渓川エリアを走るもので、無料で利用できます。11月29日に実際に現地を視察してみました。

清渓川は以前は高速道路が地上を覆い、その下を流れる河川は汚れて濁ったどぶ川と化していました。それを10数年前に完全撤去し復元、今では市民の憩いの場となっています。現在東京・日本橋の高速道路の地下化もこの清渓川復元が参考にされています。

さて自動運転バスはこの清渓川沿いを巡回しています。停留所は2か所で、清渓広場南側とセウン商店街前。途中にバス停は無くこの2か所の間、3.4kmを走行します。走行速度は時速20~25km。

自動運転ですが突発事故などに対応するため、安全管理者として運転席に1名の係員が乗車します。実際に走行の様子を見ていたところ、バス停への停車時などは手動運転を行うこともあるようです。また車内前方には走行中の位置を地図で表示するとともに、道路上の他の自動車の走行状況も映されます。

乗客の定員は7名まで。立ち席はNGです。屋根はガラスルーフで解放感があり、窓のサイズも大きめです。座席にはUSB端子とモニターも備えています。乗車するためには「ソウル自動運転専用アプリ」(TAP!)をスマートフォンにインストールして乗車予約を行う必要があります。なおアプリは韓国の携帯電話番号による身分証明が必要なため、海外からの旅行者は利用できませんでした。

バスの運行は「42dot」が行っています。現時点では2台のバスが運行されていますが、12月中には3台に増やし20分間隔で運転を行うとのことです。運行時間は平日が9:30から16:00までで12:00から13:30は昼休みのため運転は行いません。土曜日は9:30から13:30まで、日曜祝日は清渓川沿いの道路が自動車の通行禁止となるため運転は行われません。

実際の走行の様子を見ると、EVのため走行音はほとんどせず静かに道を走っていきます。清渓広場南側のバス停を出発するとすぐに信号がありますが、赤になっているとしっかりと自動的に停止していました。道路は大通りではないために車の割り込みなどはほとんどありませんが、運送などの車が歩道側に止まっている場所も多く、人の飛び出しもありそうです。安全監視員は運転しないものの、走行中は真剣に前方を注視していました。

なおバスのサイズは高さ1.989m、幅2.73m、全長5.745m、重量3630kg。ドアには圧力感知器と光感知器が取り付けられており、完全無人運転を実現する際には乗客の乗降時に誤ってドアが閉まらないようにするなどの安全策も取られています。今後テスト走行を続け、来年上半期までには清渓5街へ走行区間を延長する予定もあるとのこと。せっかくの先進的な取り組みであり、また観光地を走行するだけに、外国人への乗車体験もぜひ行ってほしいものです。

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山根康宏/Yasuhiro YAMANE

香港在住の携帯電話研究家。スマートフォンを中心にIoT、スマートシティー、プロダクトデザインなどターゲット範囲は広い。年の大半を海外取材に費やしており、モビリティーの進化を日々体感している。

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