中国自動車メーカーがスマホメーカーを買収、MWC上海2023でスマートカーを展示

2023年6月末に中国・上海で開催されたMWC上海2023では中国自動車産業の次世代開発をめぐる動きの一端を見ることができた。

世界最大の通信関連イベント「MWC」は毎年2月にスペイン・バルセロナで開催される。MWC上海はその中国版であり、毎年6月に上海で開催されている。今年のMWC上海2023にはXINGJI MEIZU GROUP(星紀魅族)が出展し、自社開発のインフォテイメントシステムを搭載したPHEVの展示を行った。同社はスマートフォンメーカーのMeizu Technology(魅族)を買収したXingji Shidai Technology(星紀時代科技)の新会社。Xingji Shidai Technologyは中国大手自動車メーカー、Geely(吉利汽車)の子会社だ。

Meizuは中国スマートフォン黎明期から製品を出しつつけてきた老舗メーカーだったが、昨今の大手メーカーとの競争に巻き込まれ、ここ数年のスマートフォンビジネスは苦戦が続いていた。一方でAndroid OSをベースにカスタマイズしたUIを搭載する「Flyme OS」を開発し、自社スマートフォンへ搭載してきた。中国のスマートフォンメーカーはこの自社OSを各社が開発しているが、Geelyはそこに目をつけ、2022年にMeizuを買収。自動車のIT化が進む中、インフォテイメントシステムをゼロからではなくFlyme OSベースに開発し、スマートカーの商用化でリードしようとしている。

ブースにはGeelyとボルボが合弁で設立した高級車ブランド「Lynk & Co」が今年3月に発表した中型クロスオーバーSUV「08 EM-P」を展示。プラグインハイブリッドの高級車であり、車内は革張り仕上げ。インフォテイメントシステムにはFlyme OSをベースに開発されたFlyme Autoが搭載されている。

車内のインパネ中央部には12.3型のタッチパネル対応ディスプレイを搭載。Flyme Autoはバッテリーの充電状態や車内温度など自動車の状態をリアルタイムで監視できるほか、Flyme OS搭載のMeizuスマートフォンを接続することでナビゲーションや店舗検索、音楽再生などが可能だ。

またスマートフォンの画面をそのままディスプレイに映し出すことができる。類似のシステムにアップルのCarPlayやグーグルのAndroid Autoがあるが、Flyme Autoは自動車メーカー傘下企業が開発しており、自動車の心臓部にアクセスできることからより深いコントロールが可能だ。

Flyme Autoの展示エリアもあり、提供される機能の体験デモも行われた。

08 EM-PのコンピューティングプラットフォームはECARXの「Antora 1000」。ECARXとARM中国が合弁で設立した中国Sinoengine Technologyが開発した国産チップセット「Dragon Eagle 1(龍英一号)」が2つ搭載されている。Dragon Eagle 1は7ナノメータープロセスで生産され、NPUの演算処理能力は合計16TOPS、GPUは1.8テラ Flopsの能力を誇る。なおXINGJI MEIZU GROUPも独自に自動車用チップセットの開発を行っていたが、8月8日に開発断念を発表。チップ開発の難しさを物語っている。

Flyme Autoの他社への供与などは未定。今後Geelyの一般車への採用も期待されている。

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

山根康宏/Yasuhiro YAMANE

香港在住の携帯電話研究家。スマートフォンを中心にIoT、スマートシティー、プロダクトデザインなどターゲット範囲は広い。年の大半を海外取材に費やしており、モビリティーの進化を日々体感している。

-EV, コネクテッドカー
-, , , , , ,