ファーウェイのEV「AITO M5」に試乗してみた

新型コロナウィルス蔓延中に中国では様々な動きがあったが、2021年12月にSeresが「AITO M5(門界 M5)」を発表。AITOはSeresとファーウェイの協業で生まれた自動運転にも対応したPHEVだ。AITO M5は中国国内のみの発売でもあり、その実力はベールに包まれていた。そこで2023年3月末、中国・深センを訪れAITOの実車を視察・試乗してみた。

なお2023年3月15日から中国渡航へのVISA発行が大幅に緩和され、日本からの渡航も容易になった。特に広東省の深センは香港との一部の国境で到着ビザの発行が再開され「深セン特区市内のみ、5日間」という限定ビザをその場で入手できる(費用168元)。

AITOは現在、PHEVの「M5」「M7」とEVの「M5 EV」、3モデルが販売されている。深セン市内ではファーウェイの店舗でも実車を展示している店がいくつかある。スマートフォンやタブレットを展示している店内に自動車も展示されているのは他ではなかなか見ない後継だ。まずは深セン中心部、電脳街としても知られる華北路にあるファーウェイストアで「M5」の展示車を見てみた。ここではエンジンをかけることはできないが、車内のインフォテイメントシステムの一部を試すことができる。以下、写真中心にM5を紹介しよう。

AITO M5のサイズは4,770 x 1,930 x 1,625mm。出力別に電気モーター1基の272ps、2基の428psと496psの3モデルが販売される。また3モデルともに1.5リッターガソリンエンジン(123ps)が搭載されるがレンジエクステンダーとしてのみ作動し、電気モーターのみで150km、ガソリンエンジン併用で1,200km以上の航続距離を可能にする。加速は0-100km/hで4.4秒とEVレベルだ。

車内には15.6型の大型ディスプレイを中央に配置。タッチパネルで指先での操作が可能だ。OSはファーウェイのスマートデバイスと同じHarmonyOSを採用している。運転席側には10.4型のデジタルメーターディスプレイが搭載される。ファーウェイの開発したサウンドシステムも搭載し車内で臨場感あふれるサウンド体験も可能だ。さらに車載カメラを通して車内の撮影が可能、車内の様子をビデオ通話で流すこともできる。

車内には運転席と助手席の間にスマートフォンのワイヤレス充電台を設置、USB Type-Cの充電端子を前後座席の前方に埋め込むなど、スマートデバイスの充電にも多彩に対応しているのもファーウェイが絡んだ自動車らしい。座席にマッサージ器を内蔵するオプションも用意されており、車内を彩る128色のアンビエント照明やパノラマサンルーフなど、あらゆる操作をタッチパネルで行える。

店舗に展示してある実車に乗り降りしてみたが、自動車の基本部分はSeresが仕上げているだけあって大手メーカーの自動車とそん色ないレベルと感じられた。AITO M5の価格は25万9800元(約502万円)から。なおAITO M5 EVも同価格。AITO M7は28万9800元(約560万円)からとなっている。

なお同じ店には「AITO M7」も展示されていた。AITO M7は6人乗りのラグジュアリー大型SUVだ。こちらは写真を1枚だけ掲載する。

さてファーウェイ本社での試乗は「M5 EV」を体験した。残念ながら今回は走行中に撮影した写真・動画の公開はNGとのこと。そのため掲載できる写真はこちらの駐車場での停車中の1枚のみとなる。

走行中の乗り心地は快適であり、サスペンションも特に癖を感じることもなかった。また加速はかなり強力で、カタログスペックの「加速は0-100km/hで4.4秒」に近い加速を感じられた。またAITOは自動運転のLevel 2+に対応。走行中に運転者が1分ほどハンドルから手を放しても曲がることなく直進していた。なおその時の速度は60km/h程度だった。他にはタッチパネルだけではなく音声による操作も可能。HarmonyOSの音声AI「小芸(シャオイー)」を使い、ドア窓の上下や座席のマッサージのON/OFFなどの操作を「シャオイー、シャオイー、窓をあけて(実際は中国語)」のように話しかけるだけで操作できた。レストランの検索や、自宅のスマート家電の操作も音声でできるという。

そして駐車場では駐車スペースの前に90度の向きで停車したのち、運転手が操作することなく自動的に左側の駐車スペースに自動車を入れた。上の写真を見てわかるように、駐車スペースの左右の白線のちょうど中心に自動車を駐車してくれる。なお今回はスマートフォンやスマートウォッチとの連携は試せなかったが、国際免許を持参すれば自分で試運転することも可能とのことなので、機会があればファーウェイのスマートデバイスと国際免許を持って再度試乗に挑みたいと考えている。

AITO M5 / M5 EVの実車を体験して感じたのは、インフォテイメントを含む車内のスマート化の完成度が高く、またPHEV / EVとしての性能も高いということだ。もちろん1年、2年と長期に乗り続けたときの耐久性やアフターサポートなどはまだ未知数だが、ファーウェイが本気を出して自動車産業に乗り出して作り上げたAITOは将来が楽しみなEVと言えるだろう。

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山根康宏/Yasuhiro YAMANE

香港在住の携帯電話研究家。スマートフォンを中心にIoT、スマートシティー、プロダクトデザインなどターゲット範囲は広い。年の大半を海外取材に費やしており、モビリティーの進化を日々体感している。

-EV, コネクテッドカー, 山根康宏『World Mobility Report』, 自動運転
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