検疫も統合された「Visit Japan Web」を使って感じたユーザーが使いやすいUXの必要性

アメリカ・台湾で取材があり、1週間ほど海外に出ていました。先日帰国したのですが、11月から入国時の検疫に使われていたMySOSが終了。日本入国はMySOSの機能を引き継いで「Visit Japan Web」に集約されました。

そのため今回はじめて「Visit Japan Web」を使ってみたのですが、ユーザー側の視点では、いろいろと使いにくい・分りにくい点がありましたので、ポイントとしてあげておきます。

「Visit Japan Web」は日本入国のための「検疫」、「入国審査」、「税関申告」の全てをVisit Japan Web上で完結できるようになっています。ちなみにMySOSではスマートフォンからの作業が必須でしたが、Visit Japan WebではPCのウェブブラウザーでも行えるので、パソコン派の人には嬉しい改良ポイントです。

使いにくいポイントとしては、まず表示までのスピードが遅いこと。検疫でパスポートやワクチン接種証明などを登録すると、表示が青に変わりQRコードが表示されます。ここまではいいのですが、この画面を再表示する際に10秒ほどまたされます。このラグが入国時に「QRコードを見せてください」と言われたときのストレスになります。

また、羽田空港では飛行機を降りてから検疫に向かう途中で係員に画面を見せて青いカードも受け取りますが、どちらにしても検疫でQRコードをスキャンするので、QRコードがない人はそこで弾かれるわけです。そのためこの青い紙が必要なのか? 立派な紙質のものを用意するのは予算的にムダでは?と思います。

ちなみに今年に入って海外へ数カ国に入国しましたが、なにかしらのチェックがあるにしても、飛行機のチェックイン・搭乗時に確認するので、基本的に到着時の検疫はスルーです。ほぼほぼフリーなアメリカも、宣誓書などはチェックインカウンターなどで航空会社が回収しますので。

また「税関申告」も電子申請で行えるのですが、到着するとまず顔写真の登録とパスポートとQRコードの読み込みを税関検査テーブルの手前にある端末で行います。この手順がめんどう。まず端末の数が多くないので並びます。

また検疫を登録する際にパスポートの写真は送信しているのに、そこでパスポートを読み込むのはなぜなのか? 税関では検疫で送ったデータが使えないのでしょうか? 顔写真の登録も毎回必要です。実は以前にも税関の電子申請を利用したことがあるのですが、そのデータは流用されず、毎回自動端末で顔写真を登録します。さらに言えば入管時の自動端末ではパスポートを読み込ませて顔もカメラでチェックしています。ならばそのデータを使えば税関での登録は不要になるはずです。

端末での申請も、申告の内容に違いがないか画面に表示されて確認ボタンを押します。ただこの作業、そもそも事前の申告で一度行っている作業です。なぜ同じ作業を何度も繰り返す必要があるのか?

最後に、自動端末でQRコードを読み込む際に、検疫で登録したQRコードではなく、税関申請で登録したQRコードを読み込ませます。つまり「Visit Japan Web」では2種類以上のQRコードが発行されるわけです。そのため筆者は、間違えて検疫のQRコードを読み込ませてしまったため、エラー表示で登録が完了しませんでした。

しかもそのエラーの理由が「申請している入国日が違っています」とディスプレーに表示されます。そのためあらためてスマートフォンで申請内容を確認しても、入国する日付はあっている。再度間違えて検疫で登録したQRコードを読み込ませてしまうというフローに陥ってしまいました。

少なくとも、そこのエラー表記は「QRコードの種類が違います」といった内容にするべきなのでは? と思うとともに、そもそも「Visit Japan Web」にまとめたなら、QRコードもひとつにまとめて発行すべきだと思います。というのも、機能をまとめてしまったため、スクロールさせないと税関用QRコードを呼び出しボタンが表示されず、しかもボタンが小さく分りにくいのです。

もっといえば、事前申請をするなら空港で作業をせずに素通りできるのが、UXとしては最適なのではと思います。カウンター手前で作業が必要なら、飛行機に乗っている間に申告書を手書きし持っていったほうが、飛行機を降りてから速く税関を通過できる状況でした。

結局窓口としては「検疫」、「入国審査」、「税関申告」が集約された「Visit Japan Web」ですが、中身はそれぞれが独立してやっているのか連携しておらず、データを共用すれば1回の作業ですむことをそれぞれで行っているわけです。デジタルで管理する側も利用する側も便利で分りやすくなるはずが、縦割り行政などの弊害か利用する側が使いにくく・分りにくくなるというのは、お粗末だなという感じです。

観光型MaaSなどのモビリティサービスも、えてしてこういった管理側の都合でユーザーが使いににくいUXというのが見かけられるので、実際に使う側の目線に軸足をおいて開発して欲しいものです。

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中山 智/Satoru NAKAYAMA

海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

-中山智『旅ゆけばMaaS』