全日空モーターサービスが29年使用した廃棄対象のベルトローダーをEV車両へとアップサイクル

全日空モーターサービス(以下「ANAMS」)は、空港内で使用するGS(Ground Support Equipment:航空機地上支援器材)において、廃車対象となった手荷物搭載車輛(ベルトローダー)をディーゼルエンジンからEV化した車両にアップサイクル。EVという最新技術を駆使して新しい車両へと蘇らせる、GSEのEV コンバージョンは、日本のエアライングループで初の取り組みとなります。

  • 全日空モーターサービスの技術で、空港内で飛行機への手荷物搭載時に使用するベルトローダーをEV車両へとアップサイクル
  • 航空機地上支援器材のEVコンバージョンは日本のエアライングループで初の取り組み
  • ANAグループの地上における脱炭素へのソリューションのひとつつに育てていくことを目指す

このアップサイクルは、ANAMSの社員の発案からスタート。ANAグループの知識を集約し、ANAMSの技術でGSEのEV化成し遂げたとのこと。

対象のベルトローダーは、1994年の使用開始から29年間、成田空港で使用され、2022 年に廃棄対象となったもの。その車両を修理、修復を行った上で、構造改造の設計、電気回路の組み上げ、EV用専用バッテリー・モーター・減速機の搭載などを実施し、電力による完全稼働に成功しています。一般電力から充電器を介して充電が可能となり、車両走行、荷役部分の稼働を含め、全ての動力源が電力となります。

車両の塗装は、ANAの取り組み「ANA Future Promise Jet」をデザインした久世迅氏に依頼し、デザインを合わせることで、空と地上のサスティナブルな取り組みを推進。 また、今回EVコンバージョン作業にあたっては、電気自動車普及協会の協力を受けています。

製作した車両は今後、2024年夏頃を目途に、羽田空港にて運用開始を目指します。また、継続的に廃棄対象となる車両のEV化を進めていくとのことです。

EV加速への期待や航空市況の復元に伴い、EV GSE 車両の輸入価格は高騰を始めており、自社開発によるEV型車両のメリットは経済的にも期待できるとのこと。今回の取り組みは、ANAMSの長年のGSE車両への技術力を基盤にしたアップサイクルに貢献する取り組みで、ANAグループの地上における脱炭素へのソリューションのひとつに育てていくことをANAグループでは目指しています。

【EV ベルトローダー概要】
動力源:従来のベルトローダーは、軽油を燃料とするディーゼルエンジンで稼働。EV化後は、リチウムイオンバッテリーの電力による電気モーターで稼働
稼働時間:1回の充電(最短60分)で、羽田空港における 1 日の運航便の使用を想定
使用年月:従来のベルトローダーは平均 20~25 年使用し廃棄。修復、EV 化により、上記に加えて 15 年程度の継続使用を想定

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中山 智/Satoru NAKAYAMA

海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

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