アップルの「次世代CarPlay」発表と車載ディスプレーの巨大化で、表示領域獲得競争がますます過熱

アップルは2022年6月6日、開発者向けイベント「WWDC22」を開催し、クルマとPhoneを接続するとで、音楽再生や電話の着信、地図アプリなど車内のディスプレイに表示する「CarPlay」の次世代バージョンについて発表しました。

次世代CarPlayでは、速度や燃料・バッテリー残量、各種温度といったクルマ自体のデータも表示できるようになるとのこと。また表示する場所も現在のカーナビなどのようにインパネ部分に取り付けられた専用のディスプレーだけでなく、IVI(In-Vehicle Infotainment:車載インフォテインメント)全体で表示できるようになるとのこと。

つまりドライバー用のデジタルメーターパネルや、後部座席に配置したディスプレーなど、クルマに搭載されるあらゆるディスプレーで各種情報やコンテンツ表示したり、コントロールできるようになるわけです。

実はこういった取り組みは、各社が注力しているポイント。現状でも2月にスペインで借りたレンタカーは、CarPlay、Android Autoに対応しており、スマートフォンを接続してカーナビ機能を利用すると、メーターパネルの中央にルート案内が表示されるなど、すでに一定の専用ディスプレー以外の表示や連携機能は提供されています。

▲スペインで借りたレンタカーでは、Android Autoのナビ機能でメーターパネル中央にルート案内が表示されていた

また、スペイン・バルセロナで開催されたMWC Barcelona 2022に出展していたGoogleは、Android Autoビルトインのルノー「メガーヌ E-TECH エレクトリック」を展示し、クルマの中から音声操作で自宅のシャッターを開けたり、車内の温度調節を行ったりといったデモを披露していました。

AppleやGoogleが車載インフォテイメントでの表示をはじめ、クルマとの連携をさらに強化していく背景には、クルマに搭載されるディスプレーの大型化があげられます。たとえばメルセデス・ベンツの次世代EQS SUVには特別装備としてMBUXハイパースクリーンを用意。これは左右のAピラーからAピラーまでにまたがる巨大なディスプレーで、メーターパネルなどと一体になっています。

またヒョンデモービスも34インチと巨大な車載用ディスプレーの開発を発表しています。

後部座席用のディスプレーを搭載するクルマも増えてきており、ドライバーだけでなく同乗者が音楽などのコンテンツを楽しんだりできるようになります。このようにクルマの中に大きなディスプレーが各所に搭載されるようになってきたことにより、必然的にそこに表示するための機能やサービスの拡充を各社とも狙っているわけです。これはAppleやGoogleだけではありません。

たとえば、ボルボはEpic Gamesと提携して、車載インフォテイメントでの表示にUnreal Engineを用いて、高品質なグラフィックスを提供しようとしています。

ゼネラルモーターズもRed Hatと協業。インフォテインメントだけでなく、先進運転支援システム、ボディコントロール、コネクティビティなど、車載の安全および非安全関連のさまざまなアプリケーションをサポートする開発を進めています。

クアルコムは、自動運転やコネクテッド、車内エンターテインメントなどのプラットフォーム「Snapdragon Automotive Platform」を発表。ステランティスと協業してインテリジェントでカスタマイズ可能かつ没入型の車載体験を数百万台に提供していくとしています。

このように、各メーカーは車載インフォテイメントに関して、いかに自社の機能やサービスを連携させられるかということに現在注力しています。自動車自体にモバイル通信機能を搭載するモデルも増えてきており、今後はクルマ自体にCarPlayやAndroid Autoをビルトインして、スマートフォンと連携しなくても各種機能やサービスが利用できるケースも増えてきそうです。

とはいえ利便性から考えれば、「どこかのメーカーの機器やサービスしか使えない」というのはナンセンス。実際現在でも、AVメインユニットはCarPlay、Android Autoの両対応という機種が多く、Alexaビルトインとった機能も合わせて搭載されています。ユーザーの利便性も考慮しつつ、各社の競争によって、より便利で快適なモビリティが登場することを期待したいところです。

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中山 智/Satoru NAKAYAMA

海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。

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